河内長野市高向神社 高向上町地車

皆さんこんにちは。

今回はこれまで1台も紹介出来ていなかった河内長野市高向のだんじりを記事にしたいと思います。

高向には3台地車があり、更に3台共住吉大佐の作品という、マニアにとっては堪らない地域です。
しかし、3台同時に高向の地に来たという訳ではなく、明治29年に高向中町、明治30年に高向上町、大正14年に高向下町へそれぞれ地車が来ています。

地車請取帳にもしっかりと記載が残っており、高向上町地車は販売から渡しまでの期間が1ヵ月しかないことから、仕入れ地車(作り置き)だったのではないか、と云われています。

製作から100年以上が経ちましたが、オリジナルの彫刻や銘板が良い状態で残っている貴重な作品です。

それではご覧ください。

河内長野市高向神社 高向上町地車

◆地域詳細
宮入:高向神社
小屋所在地:会所敷地内

◆地車詳細
形式:擬宝珠勾欄住吉型
製作年:1897年(明治30年)6月6日売 7月9日渡し
大工:住吉大佐12代目 川崎宗吉
彫刻:9代目小松源助・赤銅芳松

姿見

左が前方、右が後方。

平成9年に植山工務店で改修、平成29年に大下工務店で改修を受けています。
写真は平成29年の改修後の状態です。

側面より

擬宝珠が全部で8つとなる仕様で、勾欄が前方に大きく張り出しているのが特徴です。
オリジナルでは大屋根がの長さが現在ほど前方にありませんでしたが、平成9年の改修で延長されています。

側面より(改修前)

改修前の写真と比較すると、どのように変化したか分かりやすいです。
傷んでいた桁と猫木が交換され、高さ方向の寸法が少し上がっています。

斜め前より

よく似た作品として、明治29年製作の河内長野市松ヶ丘地車や明治30年製作の八尾市郡川地車があります。

斜め後より

破風

破風は恐らくですがオリジナル、葺地は平成9年の改修で復刻されたものかと思います。
原形を崩さないように維持されており、住吉大佐の地車ならではの風格をよく残しています。

枡組

住吉大佐の作品ではお馴染みの、隅肘木付き二段一手先です。
桁が強化・高さ方向に嵩上げされているのがよく分かります。

鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』

3面とも獅子噛で統一されています。
先ほどよく似ていると例に出した河内長野市松ヶ丘地車は、改修時に獅子噛の合わせ面から赤胴芳松師の銘が出てきたようですが、高向上町はどうだったんでしょう。その話は聞きませんね。

箱棟

箱棟:『雲海』

大屋根が延長された形跡が伺えます。

懸魚・桁隠し

大屋根前方
懸魚:『鳳凰』
桁隠し:『阿吽の龍』

全て獣の題材とされています。

小屋根
懸魚:『鷲』
桁隠し:『梅に鶯』

車板・枡合・虹梁

車板:『宝珠を掴む青龍』

高さが高くなったことによる寸足らず分が延長されています。

虹梁:『富士の巻狩り 仁田四郎猪退治』

小屋根:『五條大橋の出会い』

枡合・虹梁

右面大屋根側
枡合:『牡丹に唐獅子』
虹梁:『竹に虎』

右面小屋根側:『唐獅子』

舌を出した唐獅子がお茶目です。

左面大屋根側
枡合:『牡丹に唐獅子』
虹梁:『竹に虎』

狭いスペースに3体の唐獅子を詰め込んでいます。

左面小屋根側:『唐獅子』

木鼻

上が右面、下が左面
木鼻:『親子獅子』

全身彫刻で、全て親子になっています。

柱・花台

柱:『獅子の子落とし』
花台:『猩々』

花台:『猩々』

現在は花台としては使われていませんが、昔は使っていたのでしょうか。

車内枡合・虹梁

車内枡合:『牡丹に唐獅子』
車内虹梁:『牡丹に唐獅子』

飛獅子

左右で阿吽になっています。

脇障子

脇障子:『控鶴仙人? 蝦蟇仙人・鉄拐仙人』

左面は蝦蟇鉄拐で間違いないですが、右面は控鶴仙人?笙を吹くか巻物を持ってくれていたら判別し易いのですが、降りているので何とも…
通玄(張果老)との記載を見ますが、瓢箪に駒の描写が無いので、それはどうなんだろう?と思います。

三枚板・角障子

正面:『頼光四天王 土蜘蛛退治』

三枚板は全て大江山の鬼退治の題材で統一されています。

正面はレイヤーを重ねることで奥行きのある作品になっています。
また、登場人物にズームインした構図を採用することで、土蜘蛛を集中攻撃する緊迫感が強く表現されています。

別角度からもう一枚。

角障子(後方):『大江山の鬼退治』

右面:『四天王 鬼童丸退治』

正面に対して左右は引きの構図で、風景と人物のバランスを重視した作品となっています。

左面:『頼光四天王の勇姿』

花園中納言に出会う場面ですね。

角障子(前方):『大江山の鬼退治』

摺出鼻

摺出鼻:『牡丹に唐獅子』

旗台

旗台:『力神』

河内長野名物のぶんまわしは足回りの安定度が必要なため、台幅を広げていることがありますが、旗台まわりを見るに、オリジナルのままであることが分かります。

勾欄合・縁葛

前方
勾欄合:『二十四孝』
縁葛:『源平合戦』

後方
勾欄合:『二十四孝』
縁葛:『鵯越の逆落とし』

愛馬の三日月を背負う畠山重忠が居ました、この題材で間違いなさそうです。
その他の面も、旗の紋に笹竜胆があったりしますので、基本的に源平合戦と見て良いかと思います。

右面
勾欄合:『二十四孝』

縁葛:『源平合戦』

左面
勾欄合:『二十四孝』

縁葛:『梶原景季 箙の梅』

梅の描写と言えばやはり生田森合戦のこの場面ではないでしょうか。

腕木

腕木:『阿吽の唐獅子』

持送り

持送り:『唐子遊び』

土呂幕

前方:『牡丹に唐獅子』

前方はオーソドックスに扉式になっています。

後方:『牡丹に唐獅子』

右面大屋根側:『谷越獅子』

右面小屋根側:『谷越獅子』

左面大屋根側:『牡丹に唐獅子』

左面小屋根側:『牡丹に唐獅子』

左右どちらも親子獅子となっており、微笑ましい世界観が表現されています。

台木

前方:『波濤』

台木・下勾欄

右面
下勾欄:『波濤に兎』
台木:『波濤に鯉』

左面
下勾欄:『波濤に兎』
台木:『波濤に鯉』

台木は平成9年の改修時にオリジナルと同じ題材で復元されており、構図も極力寄せてあります。

金具

①破風中央:『雲海に宝珠』
②破風傾斜部・端部:『昇龍・唐草模様』
③垂木先:『左三つ巴紋』
④脇障子兜桁:『左三つ巴紋』
⑤縁葛:『牡丹に唐獅子』
⑥肩背棒先:『上』の文字。
⑦後梃子先:『上の文字と木瓜紋』

彫り替えられた台木にあり、井尻宣男師の銘が入っています。

住吉大佐の銘板です。
『細工人 東成郡住吉村 大佐』と書かれています。

いかがでしたでしょうか。

私が河内長野のだんじり祭りが好きなことは以前から何度も申し上げていますが、高向地区は河内長野名物のぶんまわしを曳き唄を歌いながら行いますので、唄祭りが好きな人にとっても嬉しい地域なのではないでしょうか。

河内長野駅からは少し離れた場所に位置していますが、昼のパレードの時には長野地区のだんじりと合同曳行を行い、河内長野駅前へやってきますので、是非注目して見てみてください。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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